紳士の擬態



風が強く吹いている。
この島に連れて来られて何日が経ったのか。

出会いは二度。
一度目はチームメイトの丸井と会った。武器を向け合い空笑いを交わし合い別れた。
翌日の放送でその名前が呼ばれた。
更に翌日にはそのパートナーだった南の国から来た男の名を聞いた。
二度目は氷帝の芥川。二人に黙祷を捧げた後だった。
その彼の瞳には復讐の焔が閃いていた。
丸井君をヤッたヤツを知ってる?≠ニ無邪気の仮面を被り笑っていた。
知りません≠ニ言うと一呼吸分の視線を私の目に与え踵を返し去っていった。
私には彼に与えられる答えは一つしかなかった。
次の日の放送で彼の名前を耳にした。

島には銃声が何度も響いていた。


冥い道を歩くしかない私を支える物は二つだけ。
一つは手に握る黒い凶器。もう一つは心に棲む昏い狂気。

貴方を手に掛ける事を他の誰にも許せないのです。
ならば私に出来る事は一つしかないでしょう?


放送が謳う。この島に後何人の血を吸わせれば終わるのだろうか。
呼ばれた名前と照らし合わせ名簿に既に慣れたラインを描く。

1 2 3 4 5……

まだ足りない。両手に余るだけの数の血が流れていない。


本当に此処で貴方に逢えるのでしょうか……





ガサッと立った音が人が来た事を知らせる。
音源に振り返り見た物は銀色の光だった。


やっと、逢えましたね……


腕を流れる紅が目を射る。誰が貴方を傷付けたのか。
激情が肌を焼くようにそそけ立つ。言える筈がない言葉が胸に渦を巻く。

「貴方ともあろう人が随分な油断をしたようですね」

代わりに出たのは酷く冷静な声。視線を合わせゆっくりと立ち上がる。
傷は明らかに刃物による物だった。身体能力を鑑みても躱せない筈がない。

「相手が相手じゃったけんね」


(誰がやったのですか!)


言葉は出ない。出せる筈がなかった。音が激情を含むのが解っているのだから。
一つ息を吸い込み言葉を変える。

「余程の相手だったと言う事ですね」

何時かは来ると知っていた瞬間。貴方は私の思い等遥か昔から気付いていた。
ならばこれは必然だ。
手に持っていた凶器と心に棲まう狂気を貴方に向ける。

「私も光栄な相手となれるでしょうか?」

薄らと微笑を浮かべ合わせた視線に含める狂気に貴方は如何動くのか。
それすらも貴方の手の内で踊る道化でしかないのか。



今、答えが出ます




強く吹く風が銀を舞わせた瞬間音が高らかに響いた。





詐欺師の信実

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